ひとつの終焉

週明けからちょっと晴れているので、これさいわいとばかりにバイクで通勤する今日この頃です。
で、帰り道でのこと。
町中をウロウロする必要があったので、いろいろ走り回って、久しぶりに下鴨デルタ地帯から北上をしようと。目指すは、きつね坂です。
きつね坂というのは、京都の町中にある唯一*1のヘアピンカーブを擁する道。この道は数々の伝説をつくってきました。

  • 伝説その1

きつね坂の上にある某D高校では、かつては毎年文化祭のクラスの出し物で8mmの腕を競いあうという伝統がありました。そのなかでも、不朽の名作といわれたのが「きつね坂ノーブレーキ」という作品です。きつね坂の急坂&ヘアピンをノーブレーキで下りきろうと決意した主人公が、数々の苦難の末チャレンジするというもの。ラストのダイブシーンが美しいです。わたしは、「名作リバイバル」の時に幸運にも見ることができました。

  • 伝説その2

いや、別に伝説でもなんでもないのですが…。
わたしは高校時代、なんとかきつね坂のヘアピンカーブをドリフトで曲がりきりたいと考えていました。あ、もちろん、ママチャリです。車のいないタイミングを見はからって、よくチャレンジしました。「うまくいった!」と思ったその時、見事な逆ハンをあてていました。気持ちよかった。

  • 伝説その3

これも別に伝説でもなんでもないのですが…。
くだりの急さにあまりスポットが当たっていないのですが、実は登りがたいへんです。なにしろ、左コーナーなので、登りはイン側。なので、ものすごく急です。ここを72系統という今はなき市バスが走っていました。折しも登校時間帯。とにかく、きつね坂の下から最寄りのバス停まで、いかにして自転車でバスの後ろにつききるかというのが、高校当時のわたしのテーマでした。いいタイミングでバスの後ろにつくと、きつね坂からトンネル、そして科学特捜隊本部の前の道まで全行程をバスと同じスピードで走ることができます。
で、ある冬の日。例によって例の如くバスの後ろを登っていたその時、「ゴキン」というショックとともにチェーンが歯飛びをしはじめました。学校に到着して見てみると、トップギア14枚のうち残っていたのが5枚程度だったという。ほかの歯はすべて飛んでいました。


てな感じの、まさに高校時代の思い出の詰まった坂なわけです。
ところが、ここ、道路整備をしていて、あの思い出のヘアピンカーブが走れなくなってしまうという日が近づいていました。で、今日、とうとう新しい道になっていました。とても広い、ゆるやかな気持ちのいいカーブにかわっていました。だれもが安全にノーブレーキで走りきれる(笑)。でも、そんな道はきつね坂じゃない。
なんだか、自分が大切にしていたひとつの「もの」が、突然消滅したような悲しさを覚えながら、帰途につきました。

*1:と言っていいと思います