なにを語り、なにを伝えるか

いままで人権にかかわるいろんな講演を聞いてきました。「おもしろい!」と思ったものもあれば、「ん〜…」と思ったものもあります。
もちろん、わたしは基本的には楽観主義者ですから*1、「どんな話の中にも学ぶところがある」という前提で聞くことにしています。で、実際そうだったりします。一番もったいないのは「どうせ」というバイアスをかけて聞くことだと思っています。まぁそれはどうでもいいのですが。
人権にかかわる講演の場合、大きく「当事者の話」と「非当事者の話」のふたつにわけられる気がします。で、それぞれに「おもしろいもの」と「おもしろくないもの」がある。つまり、合計4パターンがあるということにしておきます。
それぞれについてのコメント。

  • 非当事者の話でおもしろくないもの

まぁ、一番ありがちと思われるものですね。でも、これってさいわいにしてわたしが今まで聞いた中にはほとんどないんです。おそらくは、それはわたしに聞く機会をつくってくれている人(たち)が、そういうものをあらかじめ除外してくれているからなんだと思います。ほんとうにラッキーです。
で、このパターンの特徴は、具体性に欠けることかな。「べき」で片づけられると、「いや、ええし…」となってしまいます。それでも、どこかに学ぶべきことは探しますけどね(笑)。それすらもなかったのは、1回か2回くらいかなぁ。

  • 非当事者の話でおもしろいもの

これ、意外と多いです。例えば、「知識」なんかに関しては、往々にして当事者の非研究者よりも非当事者の研究者の方がはるかに豊かです。しかも、「人権」なんかに足をつっこんでいる人は、なんらかの「現場」を持っている/持っていた人がほとんどです。そういうところに立脚した話は、そうとうに刺激的です。
と同時に、非当事者の聴く側からすると、「同じ地平」に立っている人ですから、変な垣根を感じずにすみます。いわゆる「資格の絶対性」みたいなものがないので、例えば「あぁわたしにもできるんだ」という安心感・親近感を感じさせるものもありますね。

  • 当事者の話でおもしろくないもの

実は、これも意外と多いんですよね。いや、感動はしますよ。でも、それだけです。「たいへんなんだなぁ」「差別の実態ってすごいなぁ」とは思うけど、「じゃぁ、わたしはなにをすればいいの?」となります。でも、具体的に「これこれをしてください」とは講師の方は言わないし、もしも言われたとしても「でも、わたしのまわりにはいないし」みたいな感じになってしまいます。
と同時に、非当事者の聴く側からすると、ともすれば「資格の絶対性」みたいなものを感じさせてしまいがちです。そうなると、完全に「タニンゴト」。
このパターンの人がなぜこうなるのか考えてみると、「伝えたいこと」があふれているんじゃないかなぁと思うのです。でも、「伝えたいこと」と「聞きたいこと」の間には、往々にしてギャップがあります。そのギャップを話す側が感じた時、その責任を話す側に持ってくるのか聴く側に持っていくのか。もちろん、後者は論外なんですが、前者にもいろいろとあると思います。「伝えたいこと」があふれている人は、もしかしたら「あぁ、自分はまだまだ話術が足りないなぁ」というところにいくのかもしれない。でも、これってどうかなぁと思うのですが。

  • 当事者の話でおもしろいもの

基本的には、当事者が語ろうが非当事者が語ろうが、そんなものは、実は関係ないんですよね。聴く側としては「おもしろい」か「おもしろくないか」。ただそれだけなんだと思います。
ということは、「当事者」であることによりかからず、聴く側が「聞きたい」と思っていることや、「あ、そんなことがあるんや!もっと聞かせて」って思ってもらえるようなことを、こういう人は話しているんじゃないかなぁと思うのです。もしも「おもしろい」と感じてもらえない時は、「この人たちが聞きたいと思える話をできなかった」という評価を自分にくだすわけです。
例えば、牧口一二さんの話はそうでした。例えば、K口くん*2の話もそうでした。
みなさん、当事者であることに寄りかからず*3、実践者の立場で、あたかも「非当事者であるか」のように語ります。そこにたくさんの「気づき」を与えられるんですね。
自ら気づいたことは、自分自身の手中にあります。だからそこに、「なにをすればいいの?」という問いはありません。気づいた時点で、その答えは同時に手にしているからです。


まぁこんなことをつらつら考えながら、さて、わたしはどこにいるのかなと振り返ります。願わくば、「単純におもしろいもの」を語れる人間でありたいなと思う今日この頃ですよ。

*1:なんか最近つくづくそう思います

*2:いきなり仮名(笑)

*3:もちろん、当事者だからできていることはたくさんなるんですけど、そこに「資格の絶対性」を感じさせません