限界を知った(GID学会1日目・その2)

で、いよいよ札幌医科大学へ。
到着すると、順子姐さんがすでに到着しておられます。受付をすませてごあいさつ。あちらこちらとごあいさつをしているうちに、いよいよ学会の開始です。てか、針間さん来ないよ。
埼玉の時の「ロビー活動」のひどさを反省して、最近はきちんと学会に出ることにしています。

一般演題1
座長はO田さんです。隣にいたT村さんに「まんまるの会の受診者は、みんな「くまさん」と呼んでる」というと、ウケてました。

抄録集を読めばできるんだけど、あらためてまとめてもらうとおもしろいですね。というか、織田さんのツッコミ*1が、かなり秀逸。まぁ診察室でしている話なんですがね。

  • 2、当事者グループのウェブサイトの分析

永瀬まどかセソセイ(笑)。
たくさんのグループがあるんだなぁ。隔世の感がある。にしても、わたしのかかわるグループでサイトがあるのは玖伊屋だけか…。あとで「京都 GID 自助」でググってもなんもありませんでした。当たり前だけど。
「裏はとれているか」という質問への回答。「自分で確認して下さい」(笑)

  • 3、教員を対象とした性同一性障害に関する講演前後の知識や対応の変化について

参加者、女性教員が多いです。さらに、養護教諭はすべて女性。
学校全体としての対応を見ると、やっぱりトイレ問題はハードルが高いみたいです。講演前のアンケートによると、「MtFのトイレ・制服」はきついなあ。
それにしても、女性教員の意識の高さが目立ちます。それは、制服・トイレについて顕著。
「若手の女性養護教員をオピニオンリーダやナビゲーターとして重点起用を」というのは、「たしかに!」とT村さんと大笑い。
「恋愛に問題→レズビアン・ゲイとの混同は?→当事者と面談をして説明している。
選択肢をつみとることにならないか。学校だけではダメではないか。
宮島さん、さすがに昔からやっているだけあって、すごい!

  • 4、学校における性別違和感のある子どもへの対応:教員の意識

人権教育担当者研修会。508人。すごいなぁ。校長が多い!岡山ってすごいなぁ。
接したことはあるか?→27.2パーセント(高校は39.2パーセント・小学校22.7パーセント)えらい高率やなぁ。てか、高すぎる気がする。
教えるべきかどうかについては、「本人に対して教えるべき」が高率。全体に対しても「教えるべき」が高率。演者は「意外だった?」と言ってたけど、そうだろうか…。
「ほしい資料」については、「チェックリスト」が55.9パーセント。う〜ん、マニュアル化されているというか、なんというか…。
「当事者への対応の主体」は、担任・養護教員・保護者・専門医・学校カウンセラーらしい。なんか、「担任」というのはわかるけど、ある意味担任にとっては苛酷な気もする。
「本人が必要と考えることに対応すべきか」については、「本人の希望があれば対応する」が92.2パーセント、「保護者の希望があれば対応する」が75.9パーセント。裏返すと、「保護者の同意がないときつい」と言っていた。ごもっとも。他に「教育委員会の了承」「学校全体」「校長の了承」など。診断書が30.4パーセントしかない。「必要な条件かなぁ」とのこと。でも、それを言うなら「十分条件」な気がする(笑)。
ちなみに、「当事者の生徒が在籍して対応したかどうか」については、44.2パーセントが「対応できなかった」。14.0パーセントが「問題がなさそうなので、対応をせず」これについては、中学校が25パーセント。演者の方、「これが一番問題」とのこと。たしかに!
「今後対応できるか?」へのパーセンテージが意外だった。へー、MTFFTMで、ほぼ差はないんだ。
「「教えるべきでない」の根拠は?」という質問に対しては、「他にやらなくちゃならないことがある」「希望されたらやる」みたいな。まぁ、みなさん忙しいからねぇ。

  • 5、性別違和を持つ人々の経済状況と不安傾向の実態調査

これ、アンケートに答えたし。そういえば、「分析結果を送る」とか書いてたけど、返ってきていない気が…。
アンケートの回収率は、MTF:FTMが4:6。
MTFは経済格差が大きい。MTFFTMの雇用形態は総務省の男女比と同じ。年収も同様。ということは、「生まれの性別」の影響が大きい。MTFは年収と通院率に正の相関があるけど、FTMは年収によらず、ほぼ同じ。
自己受容と他者からの受容について。MTFにとっての性別移行は、関係が満たされているかどうかが大きい。多角的なコーディーネーターを育成する必要がある。性別移行には「ジェンダーと社会制度」という、より多くの人々に共通した問題を含んでいるという結論。
ごもっとも…
演題が終わった直後、「情報量が多い」との座長のO田さんがつぶやいてました。ごもっとも。
ここで、質問あり。
「多角的なコーディネーターの育成とは?プランはあるのか?」。これに対する返答。「医療関係はいる。当事者団体が独自にやるのもいい。専門家をつくるのはいいと思うけど…」。とか言っているところで、突然割ってはいる質問者あり。
「他者からの不理解/理解って、抽象的じゃないか?もう少し詳しく教えてほしい」。これに対する返答。「データはあるけど、まぁいろいろ聞いたってことで」。
まぁ、きわめて社会の問題ってことが結論でした。そりゃそうだ。少なくとも服に「隠された性別」は社会的なものですからねぇ。それにしても、膨大な資料で、せめて添付資料がほしかった希ガス


で、一般演題2。座長の康さんは飛行機の遅れがあったので、まだ到着しておられませんでした。なので、札幌医科大学齋藤さん(?)橋本さんがピンチヒッター。

  • 6、性同一性障害当事者のカミングアウト(1) −自己開示の観点に立脚した探索的面接調査−

自己開示のcritical pointとして設定したのは、次の3つ。「開示対象」「開示抵抗と開示動機」「開示成果」。ひとつひとつについてデータを発表。
まずは「開示対象」から。友人が多いという結果が出たけど、「調査対象が青年期だからかも」とのこと。あと、はじめての開示対象を「親」とした人は少ない。ある当事者が友だちは失敗してもかわりがある」とあかしたとか。
続いて「開示動機と開示抵抗」。「開示動機」には2種類あって、ひとつは積極的なもの。主として「苦しみをしってほしい」。ただし、その根底には「信頼できるから」とか「人間関係を築くため」とかいうのがあるらしい。もうひとつは消極的なもの。「ひょっとしてバレたかも」みたいな。他にアウティングがきっかけになって開示せざるを得なかったという人が13人もいたそうな。これに対して「開示抵抗」としては「親を悲しませる」とかいうのがあったと。
で、「開示成果」。これにすいては、成果が好意的だとサポートが期待できる。一方否定的な場合は拒絶される。というか、脅迫された事例もあるらしい。
結論としては、カミングアウトは一連のプロセスで考える必要がある。よりよい成果を出すためには、社会的スキル・トレーニングの適用が可能。詳細な分析は今後の課題とのこと。
で、質疑。「脅迫の具体例は?」。返答は「他の人にも言うぞ」。
まぁ、これはその通りでしょうねぇ。てか、ある部落出身の人が言っていた「カムアウトはドッチボールではなくキャッチボール」という言葉を思い出しました。たしかにドッチボールみたいなカムアウトが多いかも…。

問題意識は、ジェンダーアイデンティティが「男性/女性」ではなく、「X」であることを、従来は「不適応」と言っていたが、ほんとうに不適応なのか?調査対象となったのは某ジェンダークリニックの受診者、肉体男は154人のうち11人。肉体女は272人のうち15人。調査内容は、基本的には自由記入。大きくは次の3つに分類できる。
過渡型…今は自信がないのでXアイデンティティ
揺曳型…ジェンダーアイデンティティが揺れている
積極型…積極的にXジェンダーを模索している
で、「アイデンティティの拡散や混乱とされるのは過渡型と揺曳型では?」とのこと。なぜなら
過渡型…自己を非受容
揺曳型…これを受容している人もいるので、いずれの可能性もある
積極型→自己を受容している
で、阿部さんの質問。
「パートナーの有無による変化は?」。「性的指向のデータはあるけど、まだ分析していない」とのこと。続いて別の人の質問
GIS*2?」。「データはある。まだ分析していない。ただ、中間くらい」とのこと。
たぶん、自由記入だから膨大なデータなんでしょうね。にしても、調査対象となった「肉体女」はここでも多いなぁ…。

  • 8、一般男女及びGIDMTFFTMのTCI検査結果の比較

今年は「中核群と辺縁群の対照」がテーマみたいです。調査対象は、FTMが91人、MTFが25人プラスK大学の受診者(笑)25人で50人。ちなみに、平均年齢は、MTFのみ40歳オーバーです(笑)。
で、結論は、FTMは持続性が高く、協調性が高く、自己超越性が低い。に対して、MTFの自己指向は低く、自己超越性は高い。これは去年と一緒です。ただ、損害回避の有意差はなかったとか。で、今回のテーマになった中核群と辺縁群の話。FTMの中核群は86人で、MTFの中核群31人。
MTFでは中核群と辺縁群は変化ないけど、FTMははっきりとちがう結果が出ている。中核群は全体同様、楽観的。ところが、辺縁群は、不安が強くクール、性格は優柔不断とのこと。
ここで、Iさんが質問。「年齢による影響があるのでは?」。返答は「あると思います。ただ、平均年齢をそろえると、MTFの人数が極端に減るので…」そりゃそうです。K大学の受診者は年齢層が高いもん(笑)。

  • 9、人格の生涯発達と性同一性の統合について −発達論的にみた性同一性障害の発症に関する一考察−

なんか、「性同一性と自我同一性」にかかわる話みたいです。
性同一性は、一度形成されると生涯変化しない固定されたものではない。性同一性障害は、性同一性が自我同一性に統合されず、そのために苦悩している状態と考える。すなわち、性同一性を自我同一性に統合することに成功できた人は発症しない。なので、性同一性を自我同一性に統合させようと試みている。中核群、辺縁群といった分類を越えて、個々の当事者に適応したものにしたい。とのこと。
で、塚田さんの質問。
「自分の経験では、性同一性の根幹を発達論的に考えて解決した事例はない。結局、自我同一性との妥協点を模索するのでは」で、返答。
「自我同一性の統合を試みる。外科的治療は、あくまでも統合の手段である。当事者は自我同一性の混乱を自覚しているか?」

254人(m=27.6)が対象。内訳は、FTMが165人(平均年齢25.6歳)でMTFが82人(平均年齢31.5歳)。

FTM MTF
被害なし 73 12
被害あり 92 70

だと思う。あまり自信はありません。
で、結論は、FTMは精神的に安定している。しかし、いじめ経験のあるものは、精神的な不安定感。それに対して、MTFは基本的に不安定。MTFの女性性が充分に容認されない文化での適応しにくさがある。
質問
「いじめの内容は?」。返答「内容については問わなかった。内容の分類をすればたしかにクリアになるだろうけど、そもそも分類はできないのではないか」


ここで挫折。着替えたり、トイレに行ったりしたついでに、しばしロビーでM木ちゃんに肩をもんでもらいました。だって、肩・首・背中がパンパンだったし、しかもこのあと「ご用」がありますんで。
てことで、
一般演題4
座長はわたし(笑)。「TCI検査でMTFの平均年齢をあげたいつきです」と自己紹介したけど、ウケませんでした。
それにしても、壇上だとスクリーンの文字がよく見えるのにびっくりです。そのかわり、パソコンでメモがとれない(笑)。なので、手書きのメモが頼りです。

性別変更の数は都道府県別にわけて、それの各都道府県ごとの人口比を計算。東京と大阪が突出している。さらに他のデータと比較してみたけど、有意な相関関係は見られなかった。ただし、大阪については「お笑い系」との相関はあるかも。とのこと。
順子姐さんのコメント
「大都市周辺の都市も他の地域と同様低いのは、中途半端にそこに行くよりも、大都市に行くから」。
「大阪の相関関係」についてはすべってはりました。

  • 17、地方の当事者支援団体における今後の活動展開

COMらっどの活動紹介でした。
驚いたのは、いろんな財団のお金をうまく利用して財源を確保しておられることですね。なんしか、遠いところで、医療機関までJRで4時間、車だと8時間かかるという現状で、いろんなことをしておられます。びっくり。
あと、子ども向けの書籍をつくりたいとのこと。おもしろいなぁ。
そうそう、講演が、あの虎井まさ衛さんに集中しているのはなぜだ*3

  • 18、地方におけるGIDセルフヘルプグループの現状と可能性 ーWITH US雪の日の集い4年間の歩みを通して−

参加者が増えている。で、アンケートをとったら、リピーターが多かった。しかも、一般の人のリピーターが多い。記述欄を読んだら、「勇気をもらった」などの意見が多かった。当事者や家族だけではなく、一般の人を入れることに大きな意味がある。


で、特別講演1。記念講演です。座長は大島さん

  • GID当事者活動 −これからの課題−

「依頼を受けたのは1週間前。しかも、座長がO島さんというのは云々」からはじまった1時間の講演。
まずは略歴紹介から。でも、けっこう「略」じゃなかった希ガス。そこからさらに.jpをつくった経緯へと話は移行。某◯NJとの違いを強調。
「会員制」「代表制」「民主主義の導入」「選挙によって責任者を選出」etc。
活動は大きくは「対外的活動」と「当事者向け活動」のふたつ。まずは対外的活動から説明があったけど、いっぱいありすぎてよくわかりませんでした。ただ、印象に残ったことをいくつか。
ひとつは特例法制定の頃のこと。「子なし要件」をめぐった対処の仕方について「もうひとつのグループ」を批判してはりました。
さらに、今回の改正について、「全面改正できなかった理由」をあげてはりました。理由は次の6点。
(1)運動を一本化できなかった
(2)勝手な動きをする一部当事者がいた
(3)運動を主導できる強力なリーダーが存在しなかった
(4)運動に介入する非当事者の存在
(5)ロビー活動を制限された
(6)一部の子どものいないGID当事者から運動に対する批判や反対を受けた
これ、前にも言ってはりましたな。で、再改正については、「子なし要件」以外は改正の見込みなしとのこと。
さらに、「性別変更の履歴が残る」という問題について。なぜ困るかというと、いろいろあるけど、そのうちのひとつとして「子どもが書類をとったら、子どもにわかる」。個人的には「ええやん」と思うけど、子どもにも隠したい人がいるんでしょうねぇ。で、この記載がどうしても削除できないのは、特例法の中にある「法律に別段の定めがある場合を除き」という文章らしいです。つまり、将来的に出てくる可能性があるので、「ネーチブ」にはない「痕跡」をつけておかなくちゃならないらしいです。
続いて、パスポート問題。で、ご自身のパスポートをプレゼン。ふぅ…。なんだかんだ言ってはったけど、最終的には「なんらかの法律が整備される必要がある」と言われたそうです。
健康保険証の性別欄の問題。地方自治体によっては、性別欄に記載しないところもあるらしいです。「チャレンジしてみたら」とのこと。ちなみに、パスポートについては、ニュージーランドだったかは「X」という記述があるそうです。「これをうれしいと思うかどうかはわかりませんが」とのこと。
で、雇用問題。突然、麻美さんの後ろ姿が…。自彊館裁判の新聞記事でした。ふぅ…。
他にも「若年層当事者問題」とか「教育問題」とかの話があったみたいですが、疲れてメモがしてありません。
で、続いて当事者向けの活動。最近はこちらに軸足をおいているとか。
当事者活動をより充実する必要がある。ボランティアでは限界がある。バラバラに動いていたのでは力が分散する。と立て続けに提起。で、「個人ではなく組織として」という提起。ふぅ…。
で、.jpを社団法人化するとか言ってはりました。ふぅ…。
で、質問に野宮さんが登場。
まずは、「特例法の時にはご心労をかけました」と仁義を切ってから、
「考え方が違う団体がたくさんあるのが健全だと思います」とまずはジャブ。さらに、嫡出子問題や手術要件問題について話。
特例法の要件については、「線引きをどこにするか」ではないのではないか。イギリスなんかではRLE(服の上からの性別)を重視するのではないか?という質問。
R「判定する機関は?」
N「裁判所」
R「私見が入る。議論を深める必要」
N「その通り。どちらがいいではなく、どちらもよしあし。議論が必要」
R「議論の場がないのが問題。野宮さんとはどこで話をするのか」
N「ぜひこういうところで話をしましょう。この後懇親会もあるし」
てことで、オチがつきました。
続いて、石原さん(だったと思う)の質問
「嫡出子問題は、嫡出子と非嫡出子に区別があることが問題。DNA判定は「多様性を認める」の反対側。.jpの方向はどこを向くのか?」
R「なぜ嫡出にこだわるのか。嫡出でなくてもいいのでは。それよりも、精子を提供した人間は子どもにかかわる責任を持つべきだ」
I「それは、現場としてはなかなか受けいれがたい。精子の提供者とのかかわりを切りたいという当事者が多い。しかし、子どもは自分のDNAの中身にアクセスする権利を持つ(病気なんかのこともある)。各国を見てもいろいろあるので難しい。


てことで、あー疲れた…。


(追記)
あ、「限界を知る」の「限界」を書き忘れていました。
自分の集中力が持続する限界は、せいぜい2時間なんだなぁと…。ふぅ…。

*1:書くことによって考えをまとめたり、「あーだろうか、こーだろうか」と話をすることが大切→社会性を育む

*2:GISってなんだったっけ?

*3:あとで聞いたら、交通費だけで来るらしい。えらいなぁ…