ある仮説と推論から出される結論

1、前提
ここで考える学校は一定の地域性を持っているとする。つまり、一般的な公立学校と考えて、ほぼかまわない。


2、仮説1

  1. ある生徒に対して、1年入学時は、その入学した学校の教育効果は及んでいない。
  2. Aという学校とBという学校で、互いに校区が違う時、ふたつの学校の課題*1のありように有意に差があり、それが長い年月(教員の転勤の平均年数を6年として、その2倍=12年程度以上とする)にわたって継続しているなら、その「差」と「その学校に所属する教員の力量」の相関は低い。


3、推論1
最初の仮説から出される推論は、入学時のある生徒への教育効果は、その生徒が前に所属していた集団により規定されるということ。高校であれば中学校と中学校の校区と家庭など、中学校であれば小学校と小学校の校区と家庭など、小学校であれば保育園・幼稚園あるいは地域と家庭などになる。
ふたつめの仮説から出される推論は、まったく異なる地域の学校間*2で有意に課題に差があって、教員がすべて入れ替わるぐらいの長い年月に渡ってその差が継続的にあらわれるなら、その「差」の原因は「それぞれの地域の教員の力量」以外のところに(も)眼を向ける必要があるということ。
ふたつの推論をあわせると、たとえ高校であろうとも、ある地域性を持った学校がある課題を持つ時、それは家庭やそれをとりまく地域との関連は無視できないということが推察される。


4、仮説2

  1. 同じ校区内にある学校間に競争原理が働く時、課題を共有する生徒が集まってくる。
  2. 課題の大きな生徒と課題の少ない生徒*3にたいして、単位時間あたり同じくらいのかかわりをした場合、課題の大きな生徒の方がその課題の克服にはより時間がかかる。


5、推論2
最初の仮説から出される推論は、特定の学校に課題の大きな生徒が集まり、それは蓄積されるということ。
ふたつめの仮説から出される推論は、課題の少ない生徒がたくさんいる学校では早期に課題が克服できるが、課題の多い生徒がたくさんいる学校では、それぞれの生徒の課題は学年進行とともに徐々に克服されていくということ。
ふたつの結論をあわせると、課題の大きな生徒が集まる学校では、学年進行とともに上の学年が課題を克服している間にも、新しく課題を持つ生徒が入学してくるということ。


6、推論3
推論1と推論2を重ねると、地域性を持つ学校においては、

  1. その校区内で競争原理が働くと、
  2. 特定の学校に課題を持つ生徒が集中し、
  3. その学校においては課題の克服に時間がかかるが、
  4. 上の学年において課題をある程度克服したとしても、下の学年に新たに課題を持つ生徒が入学し、
  5. 全体として課題は蓄積されていくが、
  6. その新たに入学してきた生徒に対しては、入学当初はその学校の教育効果はあらわれておらず、
  7. その生徒の課題は前の所属する集団の持つ課題と関連があり、
  8. 「前の所属する集団」の中には「家庭や地域」がある

ということ。


7、結論
すなわち、一定の地域性を持つ学校において、課題を持つ生徒が集中する学校のもつ課題は、「家庭や地域」のありようと関連があるということ。


以上(笑)

*1:なにを持って「課題」とするかは、ここでは詳しくは述べないが、とりあえず学力や生活態度とほぼ同義とする

*2:例えば熊本と秋田

*3:先ほどと同じく、学力や生活態度とほぼ同義とする