昔飼っていたネコのこと

最近ふと、昔飼っていたネコのことを思い出しました。


当時住んでいたアパートにはベランダがあって、そこからネコをつるすまねをしたら、えらい勢いでわたしから逃げ出して、そのまま玄関から外へ飛び出していきました。
その日から、家に帰ったら玄関の引き戸を薄く開けておく日がはじまりました。でも、なかなか帰ってきません。一週間ほどたって、もう帰ってこないのかなぁと思った時、
「にゃぁ…」
と情けない声がしました。
「ありゃ、帰ってきた…」
しばらくしてトイレをみると、草だらけのうんちがしてあります。まぁ飼い猫だから、動くものを食べられずに、草を食べて生き延びていたんでしょうね。
「情けないやつやなぁ」
と、ふと笑いがこみあげてきました。
その夜、布団を敷いて寝ていると、いつもの通り、ネコは
「にゃぁ」
と言いながら、わたしの横に潜り込んできました。
その日から、何かが変わったかというと、別に何も変わらないいつもの生活がもどってきただけでした。


あの一週間、ヤツはどこで何をしていたんだろう。聞きたくても答えてくれませんでした。ネコですからね。でもまぁ、ヤツは帰ってきた。
ヤツとは、わたしがパートナーと結婚してからもずっと一緒に暮らしていました。あの当時、誰よりも長い時間を一緒に暮らしたのはパートナーでもなく、子どもでもなく、ネコでした。それから数年たって、ネコは死にました。
気がつくと、いま誰よりも長く一緒に暮らしているのはパートナーなんだなぁと、ふと思いました。